荒木飛呂彦原作の短編小説「死刑執行中脱獄進行中」を舞台化した同作。
荒木飛呂彦作品が舞台化されるのは初めてとのこと。
森山未来が主演。
本格的な舞台を見たのは高校生のときのライオンキング以来実に以上10年ぶりでした。
劇に対する事前情報は一切耳に入れないようにして、
純粋に普段触れることのない、見たこともないものを見てみようと思いチケットを予約しました。
そんな10年ぶりの舞台は、結論から言うと「よくわからなかった」が正直な感想でした。
※この記事はネタバレを含みます。
死刑執行中脱獄進行中のあらすじ
死刑執行中脱獄進行中のあらすじはこんな感じ。
殺人事件を犯した主人公である若者が、死刑を言い渡され監獄に入れられる。
反省などしていない主人公は必死に無実を訴え監獄から出すようにわめくが、よく見てみると監獄内はしっかりと家具も配置されたとても快適な部屋。
しばらくの間ゆっくりするのも悪くない、と監獄内の生活を楽しもうとする主人公。
だが、部屋の中では次々に不思議なことが起こっていく。
電気を付けようとスイッチに手を伸ばせば待ち構えていたハチに刺され、出された食事と椅子には罠が仕掛けられている。
ソファに座れば中から飛び出してきたスプリングに体をがんじがらめにとらえられ今にも電気が流れあわや感電死といったように。
部屋の中には主人公の命を奪うための罠が張り巡らされていて、予断を許さない。
必死に罠をかいくぐる最中、ふと見ると先ほどの電気ソファの爆発した破片が壁の一部に穴を空けている。
掘り進めてみるとすぐそばにはのどかな田園風景と自然が広がっている。
この穴をくぐればもう外に出られる!自由が手に入る!…が、よく見ると穴にはスリット状の切れ目が入っている。
「この穴をくぐろうとしたらギロチンが落ちてきて俺の首をはねるつもりだろう」
囚人は疑心暗鬼になりその場の脱獄はひとまず見送ることにした。
変わらずに穴からはのどかな田園風景が広がっている。
そこにはヨボヨボに歳を取った囚人が座っていた。
「いつか脱獄してやる…ざまあみろ ボケなすども」
囚人はいつか脱獄する日を夢見ながら踏み出せずに時間だけが過ぎ、死刑は生涯執行され続け、脱獄は生涯進行し続ける。
まさに「死刑執行中脱獄進行中」のまま幕を閉じる。
舞台の構成
あらすじは上記した通り。
少ないページ数の中、囚人の身に起こる出来事が漫画の中で描かれている。
これが舞台になるとどうなるか。
事前情報は一切入れずに鑑賞したけど、かなり予想を裏切られるものでした。
まず劇中ほぼセリフはありません。
1時間半の公演時間中セリフがあったのはトータル10分~15分ぐらいかと思います。
序盤は森山未來の一人芝居からスタート。
舞台上にはテーブル、バスタブ、チェスト、ソファの4つしかなくて、それらの家具もマーブル模様の布が貼りつけられた簡素的なもの。
その簡素な舞台上で不思議な全身タイツとジェスチャーだけの押し問答を繰り返す。
終始森山未來と全身タイツの登場人物5人程度のダンスがメインになる。
途中急に場面が転換し海の場面に変わる。
どうやらこれは同じく「死刑執行中脱獄進行中」に収録されている「ドルチ 〜ダイ・ハード・ザ・キャット〜」になった模様。
ただあまり脈絡が無く「ドルチ」へ移行するため、「死刑執行中~」を全編読んでいない人にとってはかなり謎な展開だったと思う。
見に来てる人は荒木作品が好きな人、「死刑執行中~」を読んでいる前提と割り切って舞台を作ってるのかなぁ。
そして部隊も終盤になると家具が取り除かれ、大きな一枚の布と一つの金具のフレームのみ残してダンス中心になる。
いや、これジョジョも死刑執行中もなんにも関係なくなってるじゃん!
芸術中の芸術、コンテンポラリーアート、前衛芸術…。一般人の僕には到底理解できない高度な内容でした。
まとめ
漫画を基にした舞台ということでエンタメ要素を盛り込んだ舞台を想像していました。
監獄の罠を舞台上で表現したり、大掛かりなセットが登場したり。
そんな期待は見事に裏切られ、エンターテインメントとは程遠い前衛芸術作品として仕上がった舞台でした。
もともと演劇は難しいものという先入観をずっともっていた僕としては、この作品が10年ぶりに演劇に対するイメージを払しょくするものになると期待していたんですが…。
やっぱり演劇は難しいものというイメージが固まっただけでした。
ただ、ほとんどセットの無い中を体だけで表現していく演者さんはやっぱりすごいなと思います。
舞台を目いっぱい使ってダイナミックに踊る姿は圧巻でした。
東京公演は終了したようなので今後仙台、広島、札幌、富山、大阪と会場は移っていくようですが、僕と同じようにエンタメ作品として期待されている方は覚悟して鑑賞してください。
舞台を芸術作品として楽しめる方はぞんぶんに楽しんできてください(^^)